東京

東京に出てきてから何年経つだろう。東京へは仕事を探してたどり着いただけで、学生時代を東京で過ごしたわけではないので、地縁も友達も思い出もほとんどない。仕事の記憶の中で、細切れの記憶が数箇所にあるだけ。それも別に良い思い出ではないし、どちらかというと心が締め付けられるような嫌な思い出のある場所か、単なる情報として知っている場所があるだけ。

 

安心して気を緩められる、本当の意味でくつろげる場所なんて一つもない。もちろん賃貸の家の中では寝たり、食事をしたりの休憩はできるけれど、外で疲れたり傷つけられたりした心を完全に癒してリラックスできる、切り離された場所がない。

 

結局、何年住んでも地に足がついた訳ではなくてフワフワと放浪しているような気持ち。特に思い入れのある場所や人も無いし、宇宙船の中にいて東京という場所をフワフワと浮遊しているような感覚。

 

ひと所に落ち着いて、第二の故郷と呼べるような安心感だったり、人間関係を作りたいとは思うけれど、結局何一つ確かな物を築き上げられてないから、人の出入りの多いこの場所で、いつまで経っても一時的な訪問者でしか居られない。

 

家が欲しい理由はやっぱり、この縁もゆかりもない東京でひとつの場所に根を下ろしたいという気持ちがあるからだと思う。何にも思い入れやゆかりのない場所で、自分の場所と呼べる、拠り所となる陣地が欲しい。

 

結局、賃貸じゃあ人の流れの激しいこの土地に住み着いた、根を下ろしたって思えない。

 

〇〇駅に家を買ってそこに住んでる。って誰かに言いたいし、自分自身でも自信を持ってそこの土地の人だって思えるようになりたい。

 

結局、いつまで経っても「他所から来た異邦人」でしかない。