物欲

今、1番欲しいものと言えば家。

縁もゆかりもない東京に仕事のために出てきて、恋人も家族も帰る故郷もない身としては、一つの場所に落ち着いた、根を下ろしたと実感する為には自分の家が欲しいと思う。

家が欲しい理由はやっぱり安心感、自分を守る要塞、他人から絶対に干渉されない自分だけの理想の世界、生活の再現。子供の時のように猫も飼いたい。

物欲や見栄も当然あるけれど、一方で死んだら何も残らないっていう物欲の空虚にも気づいてはいる。頑張って積み上げても、苦しんで手に入れても結局ゼロになる。

まぁ、思想がどうこう言っても先立つものが無いから現実的に買う選択はできないんだけどね。

 

だから、頭の中で理想の家を想像してる。

 

場所はどこだっていい。治安がある程度マシなら東京なんてどこも同じで、愛着なんて無い。

一軒家の空間には憧れるけど、セキュリティーやメンテナンス、人付き合いの煩わしさを考えたらマンションになるんだ思う。

マンションに住むなら高層マンション。コスパなんてどうでもいい、高層階にしかないメリットは完全に地上と切り離された非現実な空間だという事。ドアを開けた中に自分だけの理想の世界を求めているから、隣近所の人間の生活感が伝わってきづらい高層階がいい。まぁ、これは運もあるとは思うけど。

日当たりのいいバルコニーは絶対に欲しい。

贅沢だけど広さは3LDKくらいがいい。そして一部屋使いきれなくて、物置にしようか書斎にしようかとか考えるくらいの余裕が欲しい。東京で1番贅沢なのは空間だと思うから。無駄な空間を持っているということが非常に贅沢に感じる。

インテリアは、色々趣味が移り変わるけど、今はアメリカンサイコに出てくるような、デザイナーズ家具を置いた無機質な部屋がいい。単に何も無いのではなく、少し離れた場所から眺めた時に、鑑賞に耐える感じの部屋がいい。人間的な温かみ、家族的な暖かさはやっぱり自分の人生に合ってないし、たまにでいい。そういう人間的な場所には居られない人間なのだから。

猫は飼いたいけど、マンションの中に閉じ込めておくのはかわいそうだからきっと迷う。マンションを売って老後に一軒家に住み替える事があったら飼い始めてもいいのかもしれない。

コーヒーマシンを買って、朝コーヒーを飲みながらバルコニーで陽の光を浴びつつ、ゆっくりタバコを吸いたい。 

 

でも、そんな生活手に入れたら自分で自分を生かす、外的な要因が無くなるとも思う。消費だけをする生活、完全に死ぬまで誰とも関わらずとも生存できる環境が保障されたら、その時にまだ生きているのだろうか?まぁ、別に死んでても良いんだけれど、結局一時的に満たされた後は、今と同じように虚無感が充満してるのだろうか。多分そんな生活したら、今よりももっと共感だったり、気持ちや経験を共有できる人が居なくなる、きっとゼロになる。