お金が足りない

最近の趣味は、売り出し前の新築マンションの間取りを見て、そこを買って住んでいることを妄想すること。家具の配置や部屋の使い方、インテリアにカラーコーディネート。そこでの新しい生活を想像していると楽しい。家の中だけでなくて、マンションの近所をストリートビューで見て良さそうな喫茶店だったり飲食店を見たりもする。妄想が具体的なほど目を閉じるとそこに住んでいるような気分になれる。

 

玄関には今の家にある木製のベンチを置こうかとか、家具はこのブランドで揃えようとか、家電ならあのブランドで統一してみようとか、カラーコーディネートは3色以内で押さえてグレーとネイビーと白がいいなとか、玄関はやっぱりリモート(スマート)キーに憧れる。(これはよく考えないといけないが)猫ももう一度飼ってみたい。3LDKだと一部屋余るけどあえて使い道を決めないでそこは余裕として残しておくのが最高の贅沢だなとか、でも備蓄倉庫にするのもいいなとか、夏は朝起きてバルコニーでゆっくりコーヒー飲んでタバコ吸いたいし、ガーデニングも少ししてみたい。チェーン店の方が今は入りやすくて落ち着くけれど、家を買ったとしたら近所の個人店のお店にも頑張って少しづつ挑戦してみたいし、なるべくきちんと同じマンションの人には愛想良くしたいなとか。近所に慣れたら今度はそこから電車で行けるもっと都心の繁華街も攻略してみたいなとか。

 

現実的になればものすごい空しい妄想だけど、、、都内の新築マンションで利便性がそこそこいいところは1億近いから妄想する事しかできない。現実に手に入れることなんて考えられない。いくら20代の頃と比較して給料が上がったと言っても、貯金や資産があるわけでもないし、誰かと費用を分担できるわけでも、親から援助があるわけでもない。ただの地方から出てきた何も持たない人間が買えるような金額ではない。。。

 

前みたいに、漫画に出てくるような金持ちの家に住みたいわけではない。タワマンとかも色々とデメリットが多いこともわかったし、自分が安心して暮らせる居心地のいい場所ではないと思うから。

 

今住みたい(買いたい)のは、そこそこの広さで、そこそこの値段で、そこそこ利便性が良くて、今いる場所から割と近いマンション。地縁も住みたい場所もないから、今の環境の延長線上で安心できる住まいが欲しい。志村けんのコントに出てくるような下町っぽい「普通の家」がいい。そして、その土地で生活を根付かせていきたい。「その土地の人」になりたい。

 

子供の頃、志村けんのコントに出てくるような家だったり、サザエさんに出てくるような生活て特段裕福でもない実現可能な現実だと思っていた。悪い事をせずに、普通に仕事を頑張っていたらみんなが到達できる幸せ。現実はそんな事ない。運良く普通とされている以上の給料を手に入れられていても、スタートラインの位置や、持って生まれた資産みたいなものがなければ到底到達できないし、子供の頃に考えていた普通の頑張りではまさに生き地獄のような境遇になってしまうほど残酷な世界。

 

そんな想像をしているうちにどんどん歳だけはとる。想像でその土地、そのマンションに住んで生活しているのは今の自分なのに、目を開けたら年老いて今よりも状況が悪くなっている自分に気づくような虚しさを感じる。

 

でも、想像以外にできることがない。年収が1000万単位で急に上がる事なんてないし、貯金や資産が寝て起きたら増えていることもない。急に才能に目覚めることもない。給料を貯金して老後の不安に備えることを「しなくてはいけない」生活。毎月の給料で好きなものを好きなだけ買うこともできないし、本当に欲しいものを買うにはお金が足りない。

 

小学校5年生で自分の家が他人に買われて、全く見ず知らずの人が自分の家を我が物と(子供の視点では)する光景を目の当たりにしてから、本当の居場所、自分の家、自分の土地が欲しい。不幸の始まりの象徴が家を失ったことだから。死ぬ間際に田舎のボロくて小さい家中古の家を買っても意味ないんだよ。今、この瞬間に家が欲しいんだよ。将来の不安に対処するためだけに生きているのかと思うと生きている意味が見出せない。

 

想像力だけが一種の癒しを与えてくれる。